神撫手は堀部健和先生による初の連載作品。
週刊少年ジャンプで2004年に連載されていました。
本記事では神撫手のネタバレや感想について書いていきたいと思います。
神撫手【2巻】のあらすじ・ネタバレ・感想
こちらでは、堀部健和先生の、『神撫手2巻』のネタバレと感想を紹介していきますので、内容のネタバレをされたくない方はご注意下さい!
(※かなり個人的見解を含むので、読む人によっては全く違う解釈をしているかもしれません)
神撫手のあらすじ
『神撫手』の登場人物
速馬彰人:神の手〈ゴッドハンド〉と呼ばれる名画泥棒。
鴨婆:彰人と一緒に暮らす、色多き老婆。
楓花:同じく鴨婆の住む神社に居候する、情報収集に長けた少女。
神の手(ゴッドハンド)と呼ばれる名画泥棒の速馬彰人は、失踪した母の描いた作品を盗んでいた。ある日、闇市場の売人に捕まり絶体絶命の彰人の右手に奇妙な文様が浮かび上がる。
神撫手 あらすじ
神撫手【2巻】のネタバレ
蒼眼(そうま)とともに危機を脱した彰人は、母の残留思念に従って記憶の断片を見せます。
氾濫の責を問われて母親に殺されかけたこと、そして謎の女性に神撫手を授かったこと。
まだ自分のルーツに不明な点は多かったものの、恩義を感じた蒼眼は追手の露払いを引き受け、こと平穏のうちに別れます。
雨に濡れたマネの絵を修復していた彰人のもとに、真奈という依頼人の女子高生が現れます。
なんでも鴨婆と楓花が神撫手を利用した霊感商法の宣伝をしていたようなのです。
要望は身辺警護。
ただ真奈とワケアリの関係らしき先生を怪しんで彰人が高校に向かうと、携帯電話を使った後催眠暗示によって、これまでも真奈に危害を加えていたことが発覚します。
すんでのところで彰人が真奈を救い、事なきを得ました。
そんな依頼に彰人が追われている中、次なる標のゴッホの絵が、とある病院内にあると奇妙な占い師から告げられます。
その言葉通りに絵を見つけますが、それは別人による作品。
パスティッシュの作者・勝川と名乗る女性の家に赴きます。
そこで突如彰人の命を奪おうと神撫手を振るった勝川は、彰人の母春栄の姉であることが明かされます。
これも神撫手の宿命を断ち切るためだと言うのですが、そこに黒メガネの神撫手が現れ、彰人を攻撃します。
頼みの幻術も跳ね返され、ピンチになった彰人の左手にもまた神撫手が出現し、二人の神撫手を消し去ってしまいました。
病院に戻ると奇妙な占い師が待っており、黒メガネが属する”天予の御手”(ヘブンセント)たる秘密結社が、情報社会の転覆を目論んでいることを聞かされます。
そしてそれを抑止できるのが神撫手を消し去る、彰人が先ほど目覚めた神無手の力だけだということを。
宿命を受け入れて戦うか、逃げ出すか。
二者択一を迫られた彰人は、遥か北の異国を旅しています。
過酷な道のりの途上にして、探し続けている母の残した標が、彰人を導いてくれると信じて。
神撫手【2巻】の感想
やはり短期打ち切り漫画ともあって、この巻ではハイスピードな展開で話が進んでいき、彰人の旅も半ば、というより始まったところで物語は幕を閉じます。
果たして”天予の御手”(ヘブンセント)とはどのような組織なのか、占い師の正体は、彰人の左手に発現した神無手の実態とは、そして彰人は戦いに勝利することができるのか、答えは出ないままのようです。
それでも、垣間見えた断片から想像を巡らすのも打ち切り漫画の醍醐味(?)、と信じてこの漫画から分かることを少しだけ考えてみます。
組織の一員とされる勝川さんが、気になることを言っていました。
神撫手は、生きているだけで周りの人間を不幸にする。
おそらくですが、現在の社会が神撫手ではない人間を中心に回っているからなのでしょう。
神撫手と、そうでない人間の間に横たわる、覆しがたい大きな溝。
その溝をどうにかして解消するのではなく、文字通りの転覆を図り、この世が神撫手を中心に回るようにすればいい。
勝川さんの発言、ひいては組織の誇大妄想的な野望からは、そういう反発的な発想が背景にあるように感じます。
またこの巻でも、美術の造詣が深い(と思われる)作者の、専門的な知識をまじえた細微にわたる表現は作中通して物語を支えており、非常に魅力的に映りました。
最期に彰人について。
1巻では母親のため宿命のため、と年齢不相応に「いい子」的な描写が多かったように感じましたが、2巻では鴨婆以外のいろんな人との出会いを経て、年頃の少年らしい彰人の素の部分がよく見えたような感触を受けます。
ラストシーンでは、ロシアと思しき地の正教系の建物をバックに、「そこに――」という春栄の言葉が重なります。
故郷や親しい人たちと離れても、彰人にはパスティッシュとは別に様々な出会いが待っていて、きっとそれをどんどん取り込んでいきながら、かつて母に愛されていないのかな、と不安になっていた少年は成長していく。
そう信じられるような気がしました。